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私のジャズ [3] コルトレーンの同世代ジャズ (3)Miles Davis

[3] コルトレーンの同世代ジャズ


(3) マイルス・デイヴィス〜私の名盤


 コルトレーン(John Coltrane/1926.9.-1967.7./ノースカロライナ州出身)と同年生まれで、ジャズの世界では先輩格としてコルトレーンの才能を見出したマイルス・デイヴィス(Miles Davis/1926.5.-1991.9./trumpet/イリノイ州出身)も、『私のジャズ』に欠かせない何枚かの貴重なアルバムを残している。


 若きマイルス・デイヴィスのハード・バップでありながらクールな颯爽としたアドリブ演奏が存分に聴ける「Dig」(1951.10.5/Feat. Jackie McLean:as, Sonny Rollins:ts, Walter Bishop Jr.:p, Tommy Potter:b, Art Blakey:ds)は、私にとってマイルスの〝原像〟ともいえる必聴アルバムである。


 「 'Round About Midnight」(1955.10.26/1956.6.5&9.10/Feat. Paul Chambers:b, John Coltrane:ts, Red Garland:p, Philly Joe Jones:ds)も私にとってのマイルス名盤。アルバム・タイトル曲であるセロニアス・モンク作〈Round About Midnight〉は、ミュート奏法によるマイルスの美しい演奏と共にコルトレーンの溌剌とした演奏も聴けて、数多い〈Round About Midnight〉演奏の中でも秀逸である。


 「Kind Of Blue」(1959.3.2&4.22/Feat. John Coltrane:ts, Julian "Cannonball" Adderley:as, Bill Evans&Wynton Kelly:p, Jimmy Cobb:ds)は、世評どおりのマイルス名盤であり、画期的なモード奏法による斬新なアドリブ演奏にはいつ聴いても聞き惚れてしまう。


 そして、Wayne Shorter(ts)、Herbie Hancock(p)、Ron Carter(b)、Tony Williams(ds)というメンバーを揃えた1960年代後半の演奏では、「E.S.P.」(1965.1.20~22)、「Miles Smiles」(1966.10.24&25)、「Nefertiti」(1967.6.7~7.19)という3枚のアルバムが私のお気に入りである。


 ここでは、マイルスのリーダーシップの下でメンバー相互の集中力と緊張感のある演奏が展開されて、『Nefertiti』それ自体がアコースティク・マイルスの最終アルバムであったように、当時のアコースティクなモダン・ジャズのひとつの〝到達〟と〝終着〟をも聴くのだ。


 この後1969年に録音された「In A Silent Way」(1969.2.18/Feat. Wayne Shorter:ss, Joe Zawinul:org, John McLaughlin:el-g, Chick Corea&Herbie Hancock:el-p, Tony Williams:ds, Dave Holland:b)、そして、「In A Silent Way」でのメンバーを入替・補充して演奏した「Bitches Brew 」(1969.8.19~21)に始まるエレクトリック・マイルスは、時代精神や音楽世界に鋭敏な彼独自の感性に触発されながら、全く新たな地平として避けがたく展開された。


 エレクトリック・マイルスによるロックやファンクなどを取り込んだポリリズムによる斬新な演奏は、かつてのモード奏法のごとくマイルスによる画期的な表現技法であり、そうした全く新たなジャズの可能性を追求したイノベーターとしてのマイルスの存在感は圧倒的である。

 

 エレクトリック・マイルスとして初期のライブ盤である『Black Beauty | Live At Fillmore West』(1970.4.10/Feat. Chick Corea:el-p, Jack DeJohnette:ds, Steve Grossman:sax, Dave Holland:b, Airto Moreira:per) や『Miles Davis At Fillmore』(1970.6.17~20/Feat. Steve Grossman:ss&ts, Chick Corea:el-p, Keith Jarrett:el-or, Dave Holland:ac&el-b, Jack DeJohnette :ds, Airto Moreira:per)は、ライブ演奏ということで(良くも悪くもマイルスの統制が効いていないせい?)、散漫な印象はあるものの臨場感・高揚感に溢れる即興演奏が聴けて私の好きなアルバムである。


 しかしその後、『On The Corner』(1972.6.&7./Feat. Dave Liebman:ss&ts, Chick Corea&Herbie Hancock:el-p, John McLaughlin:el-g, Jack DeJohnette:ds 他)あたりからのエリクトリック・マイルスは、私のような守旧的?ジャズファンの身体と感性には、即時的・即興的な溌剌とした演奏よりも意図的・編集的あるいは技巧的とも言える演奏に凝りすぎて、近代的な〝電化マニエリスム〟の迷路(=閉塞状況)に陥っているように聴こえてしまう。結果として私は、1970年代以降のエレクトリック・マイルスからは遠のいてしまった。



〜続く〜

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