top of page

「コロナ・パンデミック」の課題〜「アントロポゾフィー医学からの見解」と共に考える

 先日、《「新型コロナウィルス」緊急事態宣言》と題して……この「パンデミック」について、どうしてこのような事態に陥っているのか、どのようにしてこのような事態を乗り越えられるのか、そして、今後の未来社会をどのようにして希望と共に構想することができるのか。……と記した。この「新型コロナウィルス感染症」はどうやら長期にわたって人類(史)的・地球(史)的な深刻な課題を突きつけているようなのだ。

 例えばノーベル生理学・医学賞受賞者の山中伸弥教授は「感染症の専門家ではありませんが」としつつも……「インフルエンザは春になると収まりますが、たぶんこのウイルスはそうならない。闘いは百メートルダッシュじゃなくて長いマラソンと同じ。走り続けないと駄目です。ウイルスをなくしてしまうことは難しく、うまく付き合っていかなければなりません。」……と指摘している(東京新聞/2020年4月15日掲載記事より)。

また、米ハーバード大の研究チームは…「新型コロナウイルスの世界的流行を抑えるためには、外出規制などの措置を、2022年まで断続的に続ける必要がある。・・・措置が必要な期間は、抗ウイルス薬やワクチンの開発、救急医療態勢の拡充などで短縮できるとしている。」……と予測しているとのこと(朝日新聞DIGITAL/2020年4月15日配信記事より)。

 米ハーバード大の研究チームも指摘するように、「新型コロナウイルス感染症パンデミック」という現況下、とりわけ高齢者や基礎疾患を持つ人々の命と健康を守るために「抗ウイルス薬やワクチンの開発」や「救急医療態勢の拡充」を急がねばならないと思うと同時に、「ウイルスをなくしてしまうことは難しく、うまく付き合っていかなければなりません。」という山中伸弥教授の指摘も重要なことに思える。

 複数の医療や疫学関係者の見解から察すると、今回の「新型コロナウィルス」が今後収束に向かうにしても、将来的にまた「新たなウィルス感染」という事態も想定されているようだ。「抗ウイルス薬やワクチンの開発」「救急医療態勢の拡充」という急を要する〝短期決戦〟的な取り組みだけではなく、長期にわたる人類(史)的・地球(史)的な課題として、こうした〝ウィルス〟感染が突きつけている人類と地球の生態系や免疫系に関わる本質的な問題についても考えるべきなのだろう。

 さらに、現代のグローバリズムのもとで世界的な「パンデミック」となっている事実……結果として、とりわけ世界的に弱者とされている難民やマイノリティへの感染拡大……そして、感染拡大防止の必要性から進められている「感染者」管理のシステム化(デジタル監視の問題 etc.)は、経済成長優先のグローバリズムからエコロジカルな地産地消的な経済システムへの展望、あるいは、個人と社会・国家の民主的な関係性(公衆衛生とプライバシーの問題 etc.)について、今後の全世界的なあり方に後戻りできぬ深い問いを投げかけている。

 こうしたことを考えているさなか、【日本アントロポゾフィー医学の医師会】のWebサイトに掲載されている……「コロナ・パンデミックーいくつかの観点と展望」と題された【新型コロナウイルス(COVID-19)に関するアントロポゾフィー医学からの見解】(2020年3月28日)……の記載内容に関心を持った。〔註1〕

〔註1〕「アントロポゾフィー医学」は私にとって馴染みはないのだが、敬愛するルドルフ・シュタイナーによる人智学(アントロポゾフィー/ドイツ語: Anthroposophie)を基盤とするホリスティックな統合医療として漠然と理解している。  【日本アントロポゾフィー医学の医師会】のWebサイト冒頭ではアントロポゾフィー医学について……「アントロポゾフィー医学では、人間を身体、心、精神の統合された全体性として捉え、各個人の生き生きとしたあり方を尊重します。それは従来の医学を否定するものではなく、それらを補完しながらホリスティックなアプローチで拡張します。」……と紹介している。

 この「コロナ・パンデミックーいくつかの観点と展望」では……「これまでグローバル化は、もっぱら経済的な利害と政治的な権力維持の強い影響のもとに進んできました。コロナ・パンデミックは私たちに、どれほど自分たちが今日形成する人類が同胞である人々、子孫、そして地球に対して責任を持っているかを意識させます。」……と記しており、私自身の問題意識と同様、「パンデミック」に晒される現代世界における経済や社会のあり方にも言及している。

 その上で……「疑いもなく、リスクグループへの感染は可能な限り防がなければなりません。そのためにこの間、感染の急速な拡大を抑え込むための様々な措置がとられました。ここでは市民社会全体、そして世界共同体と連帯して行動することが求められます。」……と、感染拡大の防止のための市民的・世界的な連帯の必要性を求めつつ、さらに……「(中略)・・・しかしコロナの流行は私たちに ー 例えば急速に増大した抗生物質への耐性のように ー 、共生、免疫の獲得、動物、植物、細菌、真菌、ウイルスとの境界をめぐる問いは悪魔的な敵のイメージではなく、持続可能でエコロジカルな開発展望を必要とすることを教えます。」……とも記している。

 この……「ウイルスとの境界をめぐる問いは悪魔的な敵のイメージではなく、持続可能でエコロジカルな開発展望を必要とすることを教えます。」……との指摘は、私にとって先述した山中伸弥教授による……「ウイルスをなくしてしまうことは難しく、うまく付き合っていかなければなりません。」……との言葉に連なるものとして理解される。

 さらにこの【展望】の後半箇所では……「この危機においては、レジリエンスの強化には身体的、魂的、精神的な次元があります。」…とした上で、身体的・魂的・精神的というそれぞれの次元における「レジリエンスの強化」〔註2〕のあり方や可能性を提起している。

〔註2〕「レジリエンス」(resilience)についても私には馴染みがないが、一般的には「復元力、回復力、弾力」を意味し、心理学的に「困難な状況下における不適応状態からの回復力」として用いられる言葉のようである。私個人としては、ここで使われている「レジリエンス」は、ホリスティックな「自己治癒力」に重なるものとして理解している。

なお「パンデミック」の現況下、こうした「レジリエンス」や「自己治癒力」を怪しげな〝霊力〟や〝スビリチュアリティ〟として、作為的・唯物的に矮小化・神秘化して、ウィルス感染症への医学的・疫学的な対処を無根拠に否定・無視する言説が出回り始めていることには注意が必要だ。そのような似非スピリチュアリズムは、真の〈霊性〉や〈精神性〉とは無縁の観念的・利己的な迷妄であり、「コロナ・パンデミック」の現況化にあって流言蜚語の類でしかない。

 ここで提起されている様々な「レジリエンス」……例えば、「太陽との関わりや生活リズム」等々の身体的レジリエンス 、「思慮深さや精神的な展望 」等々の魂的レジリエンス、「社会の方向性や価値観」等々の精神的なレジリエンス……は、「抗ウイルス薬やワクチンの開発」「救急医療態勢の拡充」といった喫緊の医学・疫学関連の専門領域における課題と併行して、医学・疫学関連の門外漢である私のような一般庶民にとって、「人との接触機会削減」「手洗い・咳エチケット」と同様、各々の日常生活の中で具体的に取り組み可能な課題であると思う。

〈追記〉

 医学・疫学関連の門外漢である私自身、「アントロポゾフィー医学」に関わっている訳でもないし、「アントロポゾフィー医学」に関するきちんとした知見や理解を得ている訳でもありません。この「コロナ・パンデミックーいくつかの観点と展望」という【新型コロナウイルス(COVID-19)に関するアントロポゾフィー医学からの見解】に関心を持たれた方は、ご自身で【日本アントロポゾフィー医学の医師会】のWebサイトを検索・閲覧のうえ理解を深めてください。

bottom of page