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新しい装丁本〜角背布装『柳宗悦・宗教選集(全5巻)』


 久しぶりに新しい装丁本の紹介ということで、Reliureページに作品写真を掲載。装丁本は『柳宗悦・宗教選集(全5巻)』。柳宗悦(1889-1961)は、「民藝運動」の創始者・活動家・思想家として、且つ、琉球・沖縄やアイヌ・東北の「民藝品」をはじめとした、その確かな審美眼に裏打ちされた収集・保存活動に深い敬愛の念を抱いている人物である。

 また、彼の「民藝運動」への情熱を支えている深い宗教的自覚、そして、その宗教的自覚へと連なるウィリアム・ブレーク(William Blake/1757-1827)の“神秘主義”への若き頃の傾倒と思索に関しても、以前から深い関心を寄せている。駒場にある「日本民藝館」は、私の創造と思索のあり様に、常に少なからぬ刺激と活力を与えてくれている。

 1年程前、『柳宗悦・宗教選集』を読み通そうと思い、全5巻の旧版古書を手に入れた。しかし、固い角背の薄紙による装丁、しかも、見返しページにはかつての持ち主の大きな蔵書印があり、手にしたとたん読む気持ちが萎んでしまった。そこで、傷んでいない既成の糸綴じの折丁はそのままにして、なるべく簡易な造本(布装によるくるみ製本)で改装してみた。

 今回の改装のポイントは、表紙装丁で用いた綿布。奄美大島の某工房で「シャリンバイによる泥染め」を行い、少し赤みを増す為に自宅で赤ワインによる染めを追加したものである。赤ワイン染めは色むらが出てしまったが、大島紬や久米島絣の伝統的な染め技法に使われる「シャリンバイによる泥染め」は、ただ一回のみの染めでも、現れてくる色合いや深みはなかなか魅力的。

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