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『ヤポネシア幻視』〜奄美大島の森から加計呂麻島の海へ


 2016年4月、奄美大島と加計呂麻島を訪ねた。1月に沖縄本島・久米島・久高島を訪ねて、日本本土とは異なる“土の匂い”と“時の流れ”に魅了されるとともに、なにやら“懐かしさ”を感じた。それ以来、「琉球弧」と言われる“南の島々”への関心が募っている。

 いわゆる「海の道」などとして、“南の島々”への多面的な言及が為されてきたことは、これまでにもある程度の知的了解はあったのだが、自らの身体的な実感として、その独特で固有な“土の匂い”や“時の流れ”を感受したことはなかった。

 その身体的な実感が何なのかを確かめたくて、奄美大島と加計呂麻島を訪ねたのだ。今回の旅も、過去・現在・未来を連なる“列島日本”のあり様を巡って感じること、考えること……多々あり。  例えば、名瀬から古仁屋へと向かう路線バスの車窓に、奄美大島の豊かな自然とは全く不釣り合いな景観・・豊かな森と大地が削り取られた無惨な剥き出しの山肌の一画・・が突然現れたときのこと。地元の方に尋ねると、沖縄・辺野古の米軍基地建設の埋め立てに使うための土砂を運び出しており、この土砂搬出は、奄美大島にとって一定の経済的利益をもたらしているとのこと。

 日本本土(中央政府)が、沖縄や奄美を、その自然・文化・経済、そして、人々の心までも丸抱えにして収奪する仕組みは、幕末から明治に至る支配、あるいは、戦後のアメリカ統治といった過去の構図と変わらないのだ。私自身の問題として、今後もこうした宿題を読み解いていきたいと思うが、今は、この旅で撮影した写真を『ヤポネシア幻視』と題して掲載することで、私が“南の島々”に魅了されている雰囲気を伝えたい。

 デジカメ(FUJIFILM「X100S」)のRAWデータから白黒への編集画像なのだが、森の「緑」と海の「青」の白黒画像へのデジタル変換については、面白くもあったが、少々無謀な試みでもあったかも……。なお、奄美大島の原生林で偶然出会い、かろうじて広角レンズ仕様のままに撮影した天然記念物の〈ルリカケス〉だけは、さすがにカラー画像として別扱いでこのブログ上にアップしておく。

 ところで、今回の旅でも、奄美大島のマングローブや原生林、加計呂麻島内の周遊では、それぞれ専門のガイドさんのお世話になった。それなりの費用はかかるが、その場その場に応じた貴重な情報が得られるし、何よりも、今回のように“自然探検”では安全面でも欠かせないものだ。ところで、それぞれのガイドさんが、自然との出会いに自ら心底感動しながら案内してくれる様子は、とても素敵だった。

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