top of page

R・シュタイナー『社会問題の核心』[9]〜意識化された三分節化による「自由・友愛・平等」の実現

 [第2章 生活が求める具体的で必要な試み]から-2

《2》意識化された三分節化による「自由・友愛・平等」の実現

 先に私は、シュタイナーの「社会有機体三分節化」に学びつつ、本来的に精神生活と経済生活と政治(国家)生活という三要素は……人々の生活や意識として表面化することはないにしても……歴史社会の底流として生きて働きながら、その有機的な分節化を形成・発展させており、この三要素の権力的統合が変化・破綻していく歩みとして、歴史社会の過去・現在・未来が見えてくると述べた。

 本著での次のようなシュタイナーの言葉は、こうした歴史社会の底流にある精神生活・経済生活・政治生活の三要素が、「精神生活における自由」「経済生活における友愛」「政治生活における平等」という3つの社会理想として、近代社会における無意識的な衝動として立ち現れてきたことを示している。

【近代は、意識的な態度で社会有機体の中に身を置くことを人びとに求めている。この社会意識は、三つの側面に分かれて働くときにのみ、人間の生活全体の健全な在り方のために役立つことができる。近代人は魂の無意識の深みにおいて、この三分節化を求めてきた。近代の社会運動は、不明瞭ながらその求めに応じようとしてきた。すなわち、一八世紀の末に今日のわれわれの生活基盤とは別な地盤から、人間本性の深い地下から、人間的な社会有機体を新しく形成しようとする呼び声が、聞こえてくるようになった。この新しい社会形成のモットーとして、友愛、平等、自由という三つの社会理想が掲げられた。】(「友愛と平等と自由」p58)

 しかしながら、これまで私たちの現実的な歴史社会では、精神生活・経済生活・政治生活という有機的な三分節化が無意識の底に封じ込まれており、これら三要素の権力的統合が代わる代わる変化・破綻していく歴史社会の有り様を眼の当たりにしながらも、新たな社会理想に基づく具体的な社会像を築くことができなかった。先に紹介した言葉に続けて、シュタイナーは次のように述べる。

【三つの社会分野は、そのどれもがみずからの内に固有の原理を持っている。それらが生きいきと共存し合い、共同して働き合うことによって、はじめて社会有機体全体が統一される。現実生活においては、一見矛盾したものが統一へ向かって共に働いている。社会有機体は一見矛盾し合う友愛、平等、自由を目指して進化を続けている。その現実に根ざした形成過程を見通すことなしには、社会有機体の生命を理解することはできない。】(「友愛と平等と自由」p59)

 これまでのような混沌とした社会生活や集権化された社会生活ではなく、「精神生活における自由」」「経済生活における友愛」「政治生活における平等」という、各々固有の原理のもとでの有機的な分節化を意識化した社会生活においてこそ、「自由・友愛・平等」の社会理想が実現できるということだ。

 シュタイナーの言う社会有機体三分節化とは、近代社会において立ち現れた「自由・友愛・平等」という3つの社会理想を無意識的な衝動・憧憬から救い出し、意識的な理念・方策へと具体化していく深い洞察であり、今日の社会生活・世界情勢がより切実に求めている現実的な社会構想なのだ。

〜続く〜

bottom of page