島原・天草一揆を想う〜石牟礼道子『春の城』に導かれて

05.22.2019

 最近、石牟礼道子の文章を少しずつ読み進めている。本格的な文学作品としては、今の所、『苦海浄土』と『春の城』の2作品に感銘を抱いている。

 

 不知火・有明という同一海域に相対して暮らす人々が、300年余りの時を隔てた制度としての歴史的発展のもと、同じように名を残すことも無く鮮烈・苛烈な人生を送らざるを得なかった人たちへの深い共苦と強い共感を抱きつつ表現することで、石牟礼道子の『苦海浄土』と『春の城』は、時空を超えて共鳴する生類世界のリアルな姿を一対の文学作品として見事に描き出す。

 

 かつて、この2作品を読む私は自身の肉体と心魂が「水俣病事件」と「島原・天草一揆」の時空に連れ去られて、制度としての歴史への慄きと抗いの内に投げ込まれ、そして、石牟礼道子の慈愛に導かれるようにして畏怖と永劫の生類世界を垣間見た。

 

 そのことで、昨年11月の「水俣への旅」に続いて、今年5月連休明けの「島原半島と天草諸島への旅」も私の人生にとって必然的な道行きとなった。〔註〕

 

〔註〕今回の「島原半島と天草諸島への旅」は……フェリーで熊本港から島原港へと渡り、島原城とその周辺を散策見学、路線バスで原城跡へ移動、有馬キリシタン遺産記念館と原城跡を散策見学、路線バスで口之津港へ移動、口之津で口之津歴史民俗資料館(旧長崎税関口之津支庁)を見学、フェリーで口之津港から天草下島の鬼池港へと渡り、路線バスで本渡へ移動、天草キリシタン館・天草コレジヨ館・崎津集落・崎津教会・天草ロザリオ館・大江教会を散策見学、そして、プラスアルファーで通詞島沖でのイルカウォッチングと本渡港近くの本渡歴史民俗資料館見学……という行程である。

 

 今回の主な旅の目的は、江戸初期の幕藩体制を内乱のごとく揺るがせた島原・天草一揆の主戦場となり、籠城する老若男女の一揆勢約2万数千人に対して総勢約12万もの幕府正規軍が攻めかかり、圧政と弾圧に耐えかねて結束と信仰と覚悟の内に蜂起した農民・キリシタンが惨殺・殺戮された“原城跡”の場に我が身を置くことであった。

 

 そのような場に我が身を置くことは、『春の城』での既視的な現実感がより鮮明になるという恐怖と躊躇をもたらす行為であった。実際の所、“原城跡”の場に身を置いた時に私の心魂の内で何かが響めき騒いだ。

 

 しかし、“原城跡”を取り巻く碧く広い空と海と共にいることで、その恐怖と躊躇は畏怖と崇敬へと変容し昇華していった。私の心魂の内で何かが了解されて、名もなく死して逝った人々の魂が私という存在を受け入れてくれたように感受した。

 

 そして、その了解とは、制度としての歴史的発展のもとで虐げられ見捨てられた人々の魂と共苦・共感・共生しながら、新たな様相で危機的状況に瀕する現代を生きて暮らすという実感と覚悟のように想えたのだ。

 

 なお、このブログにアップしている写真作品とは趣旨が異なるが、今回の旅で貴重で尊い想いに気づかせてくれた“原城跡”の記録写真を別ページにアップ(下線部クリック)しておくので参照されたい。

 

 

『水俣と島原半島・天草諸島への旅』

 

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