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R・シュタむナヌ『瀟䌚問題の栞心』2〜生蚈目的の賃劎働から粟神生掻ずしおの劎働ぞ


たえがきず序論から-2

《3》「商品ずしおの賃劎働」から「連携組織における報酬」ぞ

 シュタむナヌは『瀟䌚問題の栞心』以䞋、本著ず略すの党䜓を通し、䞉分節化された瀟䌚有機䜓においおは生蚈維持を目的ずする賃金劎働者は消滅し、あらゆる劎働が本来の姿である粟神生掻ずしお成立するずの展望を描いおみせる。近代資本䞻矩瀟䌚に染たりきった私たちには、䜕か途方もない構想なのだが、シュタむナヌの語調は確固たるむメヌゞに基づいおる。

 私自身、シュタむナヌの考える  瀟䌚䞻矩的な生産手段の公有化によらない「賃金劎働者の消滅」、あるいは、生蚈維持を目的ずしない「粟神生掻ずしおの劎働」ずいうむメヌゞがなかなか了解できず、本曞を幟床なく読み返すずずもに関連曞籍を読むこずずなった。ここでは、その蟺りを巡っお曞き蚘すこずにする。たずは、なぜ「賃金劎働者の消滅」なのか  シュタむナヌ次のように述べる。

【連携組織には、「賃金劎働者」は存圚しない。賃金劎働者の属する組合はみずからの力によっお䌁業家からできるだけ高い賃金を芁求するのであるが、連携組織の劎働者は、䌁業家、消費者ず䞀緒に働き、業瞟に応じた報酬を受ける。このこずは組合における議䌚政治的な議決によっおは生じない。】「経枈生掻における連携組織」p-xxii-xxiii

 ぀たり、近代資本䞻矩瀟䌚における〈商品ずしおの賃金劎働〉から䞉分節された瀟䌚有機䜓における〈連携組織における報酬〉ぞの転換が、「賃金劎働者の消滅」なのである。では、この「連携組織」ずはなにか  シュタむナヌは次のように述べる。

【経枈生掻は囜家制床からも、囜家䞻矩からも独立しお、自分自身の力で発展しようずしおいる。しかしそうするこずができるのは、消費者ず流通業者ず生産者の諞団䜓が、経枈的芳点に埓っお、囜家から独立しお、連携組織を圢成するずきのみである。】「経枈生掻における連携組織」p-xxi

【或る連携組織の内郚では、専門知識や事実認識によっお利害関係が包括的に調敎される。法埋が財の生産や埪環や消費を芏制するのではなく、個人やグルヌプの盎接的掞察や利害関係が、それらを芏制する。連携組織生掻の䞭で人びずが必芁な掞察をもおるようにするこずが倧切なのである。】「同䞊」 p-xxii

 この「連携組織」をむメヌゞするのもなかなか難しいが、自䞻管理に基づく生産組織ずしお了解可胜であり、柳宗悊が『柳宗悊遞集-第3å·» 工藝文化』1954 /春秋瀟刊で次のように蚘しおいる「ギルド」を想起させるものである。

【この組織䞭䞖期のギルドは䞉぀の功執を有぀たず思ぞる。之によ぀お盞瓊補助の寊を擧げた。圌等は團結しお互を助けた。次には之によ぀お利益の配分が、ほが合理的になされた。之がため激しい貧の懞隔から圌等を救぀た。さうしお第䞉には工藝の各郚門の綜合的連絡が成された。このこずは凡おの工藝を有機的な統ヌに導くに至った。組合の確立は材料の配絊や、人員の統蜄や、生產の過皋や、品質の維持や、各郚門の密接な連繫や、その暙準の向䞊や、又䟡栌の合理化や、その販売や、是等の統制を容易にし、又それを区固なものにさせた。】「勞働ず組織」p184-p185

【だから共抮を旚ずした秩序が厩れるや、工藝は之に䌎぀おヌ途に䜎萜しお行぀た。この厩朰を導いたものは、手工藝に斌いおは問展の制床であり、機械工業に斌いおは商業䞻矩による資本制床であ぀た。䜕れも個人の利益を䞻県ずし、共抮の理想を砎るものであ぀た。個人䞻矩は健党な工藝の普及を䞍可胜にさせた。】「同䞊」 p185-p186

 こうした「䞭䞖期のギルド」をシュタむナヌの蚀う「連携組織」ず繋げるこずに぀いお、時代錯誀の空想論ずしお片付けおしたうのは、シュタむナヌの語る瀟䌚有機䜓䞉分節化がむメヌゞできないからであろう。この点に぀いおは、たた埌の本著本論に入っおから觊れるこずになるず思うが、ここでは、ハヌバヌト・リヌドの『アナキズムの哲孊』1968/法政倧孊出版局刊における次のような指摘を玹介しおおく。そしお、「賃金劎働者」を成立させた近代資本䞻矩瀟䌚こそが、人間本来の経枈生掻のあり方を歪めおいる歎史的に特殊な経枈制床であるこずも考えおみる必芁があろう。

【アナキストは人間の唯䞀性を認め、人間が同胞ずの間で远求する共感ず盞互扶助を限床ずしお組織を蚱容する。そこで珟にアナキストは、瀟䌚契玄の代わりに機胜契玄を提起し、契玄の暩嚁は特定の機胜の遂行にだけ限られる。政治的䞀元論者もしくは暩嚁䞻矩者は、画䞀性を匷芁する組織䜓ずしお瀟䌚をずらえる。アナキストにずっお、瀟䌚ずは諞集団の均衡ないしは調和である。そしお、われわれのほずんどは䞀぀あるいはそれ以䞊の集団に属しおいる。唯䞀の困難は盞互関係の調和である。】「アナヌキズムの逆説1941」p166

【珟代を離れお、たずえば䞭䞖ぞ行っおみるず、そこには䞍完党ながら、機胜的な瀟䌚組織が可胜なこずを瀺す実䟋がみられる。その挞進的な完成は資本䞻矩の勃興のために劚げられたのだ。クロポトキンが瀺したように、他の時代、他の瀟䌚圢態もたた、機胜集団間の盞関関係の調和が可胜であるこずを、十分に確蚌しおいる。】「同䞊」 p167

《4》䞉分節化された瀟䌚有機䜓における「粟神生掻ずしおの劎働」

 シュタむナヌが構想する瀟䌚有機䜓䞉分節化のもずでは、「賃金劎働者の消滅」ずいうこずが、劎働力商品の垂堎的察䟡ずしおの「賃金」から、劎働成果の業瞟的察䟡ずしおの「報酬」ぞの転換のみを意味しおいるわけではない。これのみであるならば、ある意味、今ふうの業瞟䞻矩・胜力䞻矩に堕しおしたう。

 シュタむナヌの語る「賃金劎働者の消滅」ずは、同時に、生蚈維持を目的ずする“劎働”そのものの倉容であり、人間本来の劎働のあるべき姿ずしおの「粟神生掻ずしおの劎働」ぞの根柢的な転換を意味しおいる。ここに、シュタむナヌの人間的劎働に関する深い掞察力、そしお、その瀟䌚論の独自性ず普遍性が秘められおいる。シュタむナヌは本著本論を前にしお次のように蚘し、このこずを瀺唆しおいる。

【人間ず人間、連携組織ず連携組織の関係は、劎働の傍らで圢成され、その圢成によっお、劎働する者の意欲も消費する者の利益も保障される。】「経枈生掻における連携組織」p-xxiii

【このような連携共同䜓を求めようずする衝動は、人間本性が囜家の干枉を受けない限り、おのずず生じおくる。他方、自由な粟神生掻もそこに結び぀こうずする。なぜなら自由な粟神生掻は、このような共同䜓の䞭で圹に立ちたいず願うからである。】「同䞊」 p-xxiii

【粟神生掻が自由であれば、その粟神生掻固有の力を有効に働かせるこずができる。そしお、連携的に圢成された経枈組織であれば、連携組織の䞭で経枈䟡倀を有効に働かせるこずができる。経枈生掻の䞭で個人がしなければならないこずは、経枈的に連携しおいる人たちずの共同生掻から生じおくる。それによっお、自分の仕事に芋合った仕方で、経枈生掻に関䞎する。】「粟神生掻ず経枈生掻の連携」p-xxv

 以䞊の論述だけでは、「粟神生掻ずしおの劎働」ずいうむメヌゞは掎みづらいし、本論においおも詳しくは論じられおいないが、私の理解は  䞉分節化された瀟䌚有機䜓における「自由な粟神生掻」のもずでは、人間本来の瀟䌚意志共同䜓の䞭で圹立ちたいずしお、自ずず連携組織における劎働ぞの衝動・意欲が芜生える  ずいう意味での「粟神生掻ずしおの劎働」ずいうこずだ。むろん、ここでの「粟神生掻ずしおの劎働」に、業皮・職皮等による差異はない。

 このような「粟神生掻ずしおの劎働」ずいう構想に察しおは  生蚈目的生掻のための収入確保の劎働も「粟神生掻」なのかずいう疑問生蚈維持ずいう経枈生掻そのものでないか、そしお、劎働ぞの衝動・意欲を人間本来の瀟䌚意志ずしお芋るこずぞの疑問人間は元来、瀟䌚他者の為に働く意欲などないのではないか  ずいぶかる声が、シュタむナヌ圓時より今日たで連綿ず続く。

 第䞀の疑問に぀いおは  シュタむナヌの構想する䞉分節化された瀟䌚有機䜓のもずにおいお、生掻のための収入は瀟䌚的・公共的に等しく保障されるいわゆる「ベヌシックむンカム」  ものずしお私は理解する。その結果、劎働成果に察しお埗られる「報酬」が経枈過皋で担う圹割自䜓、生蚈維持を䞻目的ずする「賃金」ずは異なる性栌を持぀こずになるであろう。぀たり、「報酬」ずしお埗られる貚幣は、生蚈のための生掻財賌入のための決枈を担うこずよりも、䞻ずしお、新たな経枈掻動に備えおの投資や融資を担い、さらには、瀟䌚的盞互扶助ずしおの莈䞎を担うこずになろう。

 第二の疑問は難関であり、私自身、今でもそうした想いにしばしば陥る。しかし、そうした囚われにある時  「粟神生掻ずしおの劎働」ずいう構想自䜓が、実は、自由な粟神生掻によっお育たれる人間本来の「瀟䌚意志」の発露なのであり、その「瀟䌚意志」を支えおいるのは、シュタむナヌの霊性論による「叡智」や「意志」なのだ  ずいう気付きに救われおいる。こうした気付きに察しお、『シュタむナヌの蚀葉』高橋蚳、飯塚線/2014/春秋瀟刊に玹介されおいる次のような蚀葉は、私ぞの励たしずなる。

【珟代の課題は、各人がみずからの内なる衝動から党䜓のために働くようになるこずなのである。どんな時代にも劥圓するような瀟䌚問題の解決法を探したりする必芁はないのだ。ただ自分の生きおいる今の時代の盎接的な必芁だけをふたえお、瀟䌚的に思考し、掻動すればいい。䞭略粟神をふるい立たせる䞖界芳をもたない限り、物質䞊の豊かさを促しおくれる諞制床であればあるほど、その䞭で生きる人は誰でも利己䞻矩を匷めざるをえない。そしおその結果、次第に困窮、䞍幞、貧困が生み出される。】「第二のからだのためにはたらく」 p259-p260

〜続く〜

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